Field Note 02 / Doro
更新日:6 時間前

奄美大島は、島の中央部から南部にかけて山地が広がり、河川や滝など水の流れと関わる地形が多く見られる。
山間部から河口域へと移動すると、森林、川、マングローブ、海岸など、異なる環境が連続している。
河口域にはマングローブ林が広がり、海水と淡水が混ざる汽水域では、潮の満ち引きによって水位や塩分濃度が変化する。
このような島の環境を見ていく中で、もうひとつ気になったのが奄美大島で受け継がれてきた「泥染め」

泥染めとは
泥染めは、奄美大島の伝統的な染色技法であり、本場奄美大島紬の染色工程のひとつとして知られている。
その名前から「泥で染める」技法だと思われがちだが、実際には、植物から抽出したタンニンと泥に含まれる鉄分を反応させることで色を定着させる。
まず、奄美で「テーチ木」と呼ばれるシャリンバイをチップ状にして煮出し、タンニンを含む染液をつくる。
染液で糸を染め、石灰液を使って染料を定着させた後、鉄分を含む泥田の中で糸を揉み込む。
この工程によって、シャリンバイに含まれるタンニンと泥の鉄分が反応し、糸の色が赤褐色から次第に深い黒褐色へと変化していく。テーチ木染めと泥染めを繰り返すことで、大島紬特有の色がつくられる。
泥染めは
植物、石灰、泥、そして鉄分。
それぞれ異なるものが工程の中でひとつの色になっている。


テーチ木という植物
テーチ木の和名はシャリンバイ。
奄美大島だけに生育する固有種ではなく、日本では宮城・山形県以南から九州、沖縄にかけて広く分布している植物である。
奄美大島ではこのシャリンバイが染料として利用され、「テーチ木」という名前で呼ばれてきた。
シャリンバイを煮出すと、タンニンを含んだ赤褐色の染液が得られる。この植物由来の染料が、後の泥染めの工程で鉄分と反応する。
ここから考えると、泥染めは「泥の染色」というよりも、植物と鉱物の反応を利用した染色と見ることができる。

なぜ奄美で泥染めなのか
ここでひとつの疑問がある。
シャリンバイは奄美大島だけの植物ではない。タンニンを利用した染色も、奄美だけに存在する技法ではない。
では、なぜ泥染めという技法が奄美大島で発達したのか。
ひとつの要因として考えられるのが、島の地質と気候、そして土壌の条件である。
奄美大島には、四万十帯に由来する古い堆積岩類が広く分布している。
また、温暖で降水量の多い気候のもとで岩石の風化が進み、赤黄色土などの土壌が広く形成されていることが知られている。
こうした環境では、土壌中の鉄が相対的に残りやすく、赤みを帯びた土壌が形成される。
さらに、奄美大島の泥染めでは、鉄分を含むきめ細かな泥田が使われてきた。
現在も奄美の泥染めについては、こうした泥田の性質が技法を成立させる重要な条件として説明されている。
つまり泥染めを支えているのは特殊な材料だけではない。
シャリンバイの植生。
鉄分を含む泥があること。
サンゴや貝などの石灰を利用できること。
そして、それらが同じ土地の中で組み合わさっていること。
そうした複数の条件が重なることで、奄美大島ではこの染色技法が発達してきたと考えることができます。
今回のフィールドワークでは、なぜこの土地でこの技法が残り発展してきたのかという問いが見えてきました。
また島の人々や、世界自然遺産となった自然環境など現地で知れたものや体験したことの多さは計り知れない量です。
泥染めは二か所を訪ねましたが、どちらもそれぞれ異なる方法で行われていました。
なかでも明さんのところでは、より素朴で力強い方法で染めを行っていました。
実際に泥田へ足を運び、そこで布を泥に染め、その後、川へ移動して布を洗います。
泥田と川を行き来しながら、ひとつの布を染め上げていく。
とても時間と手間のかかる方法ですが、そうした土地に根ざした工程そのものも、泥染めの魅力のひとつなのだと感じました。
10月中旬にはこの企画展がありますのでその報告も兼ねて。
もちろん泥染めした商品も並びます。また。




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